前回で述べた様に、Ben Riach(ベンリアック)、Glendronach(グレンドロナック)を一躍人気蒸留所に押し上げたBilly Walker(ビリー・ウォーカー)氏は少なくとも日本のウィスキーファン達にとっては、半ばスターみたいな存在だった。
そのBenRiach Distillery が身売りなんて青天の霹靂と感じたファンも相当数いたかも知れない。

 
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左=Ben Riach Limited Release 1976 34yo 55.8% Sherry butt / 1978 32yo 50.4% Tokaji finish(
右=Ben Riach 1987-2012 24yo 52.0% for Highlander Inn 25年に4日だけ足らなかったww


Ben Riach という蒸留所は抑々、Longmorn(ロングモーン)の2軍みたいな感じの扱いで、1898年に創業したもののその翌々年に停止。
その後Glenlivet(グレンリヴェット)の傘下に入って再開出来たのは60年以上後の1965年。そこからは所謂Chivas Brothers 系の一員としてGlenlivet やLongmorn 等と運命と共にし続けて、Seagram(1978)→Pernod Ricard(2001)と経営が変って行ったが、2002年生産停止に再び追い込まれた。
そして2004年、Billy Walker の許に移り、今に到るが、それまでフル生産になった事が無かったのである。
 再開後も中心としたGlenlivet 系列の中でも全く目立たない存在だったので、お家の事情に振り回されるような形で、この蒸留所本来のスタイルとは全然違う様な原酒も試験的に作らされたという時代が続いたのである。
この事自体は非常に不本意に見えるが、こうした諸般の大人の事情によって、Ben Riach では70・80年代を中心にヴァラエティに富んだ特徴的な原酒が沢山残された訳で、後の21世紀になってその事が、ビリーに大変な幸運をもたらしたとも言える。


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左=Glendronach single cask オフィシャルボトルのシリーズから 1994-2011 17yo 60.1% 並び1971=2010 39yo 48.1% 何れもOroloso Sherry butt 熟成
右=鹿児島のキンコー独自のボトリング 1994-2012 18yo 55.3% Sherry hogshead 熟成


Glendronach は1826年創業、元々はArdmore(アードモア)蒸留所と兄弟的な存在だった。1960年からはWilliam Teachers and sons の経営になった。何と言ってもTeacher’s(有名なブレンディド・スコッチ)の主要原酒として有名だった。1976年にビジターセンターを作る等繁栄を誇った時期もあったが、
Teacher's がAllied Breweries(後にAllied Domecq)に買収された事が最後は裏目に出たのか、結局1996年~2002年まで休止を強いられた。
再開後の2005年にDomecq が事業売却を行った為Pernod-Ricard 傘下に移ったが、あまり陽の目を見られず遂に2008年ビリーの許に行ったのである。シェリー樽による原酒の熟成を非常に早くから始めた蒸留所の一つであったので、シェリー樽熟成の原酒が豊富にストックされていた。シェリー樽モルトが少なくなった現在、これが思いっきり強力な武器となった。


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左=Glenglassaugh 30yo 44.8% Billy Walker 体制下での最初のリリース
右=Glenglassaugh 1973-2012 39yo 46.3% for Campbelltoun Loch and Shinanoya


それから序でに、Glenglassaugh(グレングラッソ)についても触れておくと…、 1875年に創業、その数年後にHighland Distillers(ハイランド・ディスティラーズ)に買収される。今でいうEdrington Group(エドリントン・グループ)系列だったということになる。 20世紀に入っては2度の閉鎖を経験。1956年に再開されると設備改修を受けるが、30年後の1986年に3度目の閉鎖。 2008年、オランダ人投資家のScaent Group に売却され、同年に再開。2013年にビリーの許に移る。兎にも角にも影の薄い蒸留所なのは間違いない。
 

ビリーが大躍進でたっぷり商売出来たのは、あくまでも前オーナー時代の原酒のおかげだったのである。換言すれば、他人の褌(ふんどし)で勝ちまくって番付を一気に上げたという事にもなろうか。

ビリーが経営する様になってからの原酒は未だ殆ど流通していない。まぁ、時系列から考えれば当たり前の事だが。
これはヴェンチャービジネスによくあるパターンだが、目的はあくまでも事業の売却益だったのかと思わざるを得ない部分が有る。頭の良い人間はヴェンチャーで専らこれを狙い、売却益が出ればそれを元手にまた新事業を興す。
この論理をこの件に当て嵌めたとするなら… 蒸留所買収で引き継いだ原酒を上手く売りまくり、蒸留所のブランド価値を上げて同時に元手は回収、そして事業売却で大きなリターンを得る。
これで説明が付くと思いきや、そうとも言えない点も出て来る。

先ずはGlenglassaugh なんて買った事が疑問になる。そこには原酒があまり残っていなかったのは明らかだからこの手は使い難い。
この件について多くの情報が得られない現在、あくまでも憶測の域でしか書けないが、この先真相がそうそう表に出されるとも思えない。


もう少し色々書こうと思うので、Part 3 に続く!
 

)Tokaji(トカイ)はハンガリーを代表する白ワインで、同国の北東部で生産される。主要品種はFurmint(フルミント)とHarslevelu(ハーシュレヴェル)その中でも、Tokaji Aszu(トカイ・アスー)は世界3大貴腐ワインの一つで、16世紀には生産が始まっていた。因みにAszu というのが貴腐を意味する



※ この記事は旧ブログからの移転記事につき、旧ブログにてアップされた時点(Jul. 2016)での事実関係に基いて書かれているので、現在の事実関係とは大きく異なる場合があっても何卒ご了承賜りたい。



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