Côte Rôtie(コート・ロティ)と聞いてそれだけで胸が何処か時めく、そんな人間は中々居ないどころか陰キャ変質者扱い。酒屋も愛好家もボルドーやブルゴーニュ、シャンパーニュばかり拝みたがる所がある。ローヌファンという変節漢を受け止めてくれるインポーターや酒屋は極めて少ない。

この記事でフィーチャーするBernard Burgaud (ベルナール・ビュルゴー)、小生も含めたローヌ・フリークなら飛び付きそうな名前で、この生産者をフィーチャーするのは2回目である。前回は一昨年の2月で1997年の物を取り上げたが、今回は1998ヴィンテージになる。
彼が父親の急死に伴いこのドメーヌを引き継いだのは1980年、当時は2haだった畑を買い増して4haまで広げたが、Côte Rôtie 以外に畑を持っていないので全部でもたかだか4haにしか過ぎない極小ドメーヌである。
それでも今やこのアペラシオンを代表する生産者の一画を占め、その名声は世界的なものと言えるレベルである。抑々そんな規模なので日本での入手は極めて難しいが、それでも一時期は複数のインポーターが入れていたが、いずれもスポット輸入の域を出ず、結局この国内では殆ど見られなくなってしまった。


今から15年位前だっただろうか?、横浜は矢向の酒屋のオヤジが勧めてくれたのがこのワインとの出会いだった。その時期はスポットで幾つかのヴィンテージが入って来ていたので、4ヴィンテージ程は買えたのだが、その後は買うチャンスすら無いに等しかった。


cotrot98bur01
さすがに新たな入手を半ば諦めていた小生だが、今年になって5月に2016ヴィンテージをネットで入手した。前回の入手から随分と年月が経ってワインの相場は当然上がってるので、それなりの値上がりはあったが、基地外の様な価格になっていなかった。狂乱物価になっていないからこそポチったのだが…。
といっても、世界はインフレが続いて日本だけ20年以上デフレという状況なのは御存知であろうが、これがワインがより「狂乱物価」になってしまう大きな要因だと考えられる。


コート・ロティの名立たる作り手達の中では、どちらかというとモダン系の作りと評される事も多いこの蔵だが、3つの区域で獲れた Syrah 種100%を完全に除梗。30~33度の温度帯で2週間程度掛けて醸して、その後アリエ(Allier)産オークのBarrique (バリック=小樽)・新樽比率20%で15か月程熟成してボトリングしている模様である。生産本数は凡そ15000~20000本程度と推計されている。

ワインのインプレッションに入って行く。先ず、色を見ると全体的にガーネットだが意外と暗め、深度も結構ある。ルビーパープルは殆ど残っていない。
1層目のエレメンツとしては、野苺ブラックチェリーラズベリー、クランベリーシャンボールリキュール
続く2層目は、ブルーベリー赤スグリ煎ったカカオ(中南米系)、黒文字、リコリス、カユプテ、丁子、黒無花果ハスカップ山査子リエージュシロップコケモモ
更に3層目で、スターアニス、Earl Grey、ラプサンスーチョン、ジュニパーベリー、ミントローズマリー昔のFernet系BénédictineAngostura野薔薇花椒乾燥セップ茸乾燥ポルチーニオレガノ、トリュフという辺りが微かに出て来る。



ピーキーな所は無く、なだらかで綺麗なグラデーションを形成している。端正でまだしっかり締まっている。タンニンや酸もまだ結構しっかり主張してはいるものの、アフターもフィニッシュも尖った所は無い上に良い丸さが出ている。一見中庸な感じにも見えるが、最初から最後まで抜けは割と良い感じで、質感は一見凄くはないように思えるが、良く感じてみるとやっぱり結構凄いと思える。
かなり高次元でバランスの取れた躯体であるのは間違いない。


1998というと、このアペラシオンに於いて作柄は凄く良いわけでは無い、隣接する1997や1999に比べると埋もれてしまうかも知れない。更に、この年はローヌでも南部の出来が極めて良いとされ、これに対し北部は割を食った感がある。でも、一寸待って欲しい(LOL)
この脇役達に恵まれたエレメンツを持ったワインは、ひょっとしてひょっとしたらまだ熟成での更なる高みに行く前段階で、メタモルフォーゼ前夜という所なのだろうか?


採点結果は…、18.5 / 20


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