Dufftown 街角ミュージック

穏健リベラルの波とマイナーパワーがこの世を救う

2016年9月、FC2 から移転。
Blairfindy1号2号から大文字左京(だいもんじ・さきょう)に改名しリスタート
旧名義の画像が混在しているのは御了承願いたい

記事並び画像の無断使用転載はこれを固く禁ず!
画像をクリックすると大きな画像が出る。

whisky

Mortlach 14yo 57% Sestante (1970 or 80s)

今回は去年秋に京都は六角通沿いの有名店で頂いた逸品について投稿したい。
記事のタイトルを見ると判るが、このボトルはその頭部に貼られたタックスシールの模様から、1970年代後半から80年代初頭の時期のリリースという事だった。
年数表記だけがあって、蒸留年も瓶詰時期も書かれていない。シングルカスクか否かも判らないが、シングルカスクなんてそもそも殆ど無かった時代である。こういうボトラーズであっても蒸留年や瓶詰時期を明記するなんて事も一般的にはあまり行われていなかった様に思われる。
前にも述べているが、この Sestante(セスタンテ)というイタリアのボトラー、現在は Silver Seal(シルヴァー・シール)に引き継がれ、この Sestante の名を冠したボトルもリリースされている。ただ、この Silver Seal のボトル自体が元々高額だったが、ここ数年で超が付いて超高額になってしまった。


mtlc14y57ses01色は赤みの掛ったゴールド、シェリーカスクという色合いで期待をそそる。

この酒の香味を構成するエレメントを拾い出して行くと…
プラム、赤スグリチョコレート、カカオリキュール巨峰ラズベリー、苺、黒胡椒、トリュフ、鞣革、リコリス、乾し草、パイントゥリー、ティートゥリーアロマ
そこから更に硝煙、炭火焼肉、鰻の蒲焼

樽由来と思われる多少の苦味は残るものの、シェリー感がガッツリではないがしっかり綺麗に乗っている。シェリーカスクとしては理想に近い形の一つかも知れない。
口蓋内と舌の上ではジューシーな躯体を見せて、旨味が溶け込み集積された感じが明確に感じ取れ、液体としてかなり美しい。噛める様なボディで且つ滑らかで品が良く、57度という度数を感じさせない。
この蒸留所はしばしば「Dufftown の野獣」とも称されるが、このボトルは「概ね美女、所により時々肉食系」という全体像か。

味の底部もしっかりしているので、その厚みを安心して楽しめる。アフターも長く、硝煙や焼肉といったこの蒸留所に時折現れる独特のキャラクターも具備している。これを良くも悪くもMortlach だと表する事も出来るが、それ以前に酒として非常に高レベルであるのは間違いない。


Les Meilleurs Vins de France 的な感じで点を付けるとするならば… 18.5 / 20




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Caol Ila 25yo 1979-2005 62.4% Douglas of Drumlaing

先日、大阪に赴いた際に北新地の この店 で頂いたボトルを紹介しよう。Islay(アイラ)のモルトをじっくりテイスティングするなんて何時以来だろうと思いながらの1杯だった。
この店、この春以降はアイリッシュの品揃えを急速に増やしていて、スコッチは隅に追い遣られつつある様にも見えるが、一体何時開けたんかいなと思う様な一寸懐かしいボトルも結構残っている。

今回登場の Caol Ila(カリラ)といえば、アイラ島北東部に位置して同島では最大規模を誇る。それ故か所謂ボトラーズ物でもリリースされる数はある方である。
Douglas of Drumlaing(ダグラス・オヴ・ドラムレイン)は有名ボトラーの Douglas Laing(ダグラス・レイン )の系列ブランドである。



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色は中間的な明度のゴールド

1979はこの蒸留所の黄金期、70年代終盤から80年代初頭は傑作に恵まれているので、このボトルにも当然の如く期待は高まる。

Caol Ila らしくピートの薫煙香とヨード、磯の香りから始まるが、これ自体はあまり強くない。アイラ的な臭さは予想より穏やかで、殆ど感じられない場面すらあって、拍子抜けした感すらあった。
ただ、そんな所もアイラの中では元々比較的中庸なキャラだったこの蒸留所なら許されるのか。

肝心の香味のエレメントを拾って行くと…
黄桃ミラベル焼き林檎胡桃ヘーゼルナッツアーモンドマーマレードグレープフルーツ(赤)梅酒パインパパイア
更にはサンダルウッドパチョリヘリクリサムのアロマ、シナモン、そして微かにリエージュシロップ

特筆すべきは上質の出汁を想起させるようなシームレスで上品な旨味感が盛り上がりを見せて来る事であろうか。非常にインプレッシヴですらある。
しっかりしていて豊か、そしてウォーム、流麗な美しい液体、勿論長さも十分以上


開けてから相当な日数(年月?)が経っているが、その事で色々な要素がしっかり感じられる状態まで開いていたのはラッキーだったかも知れない。その一方でアイラ臭さがその間に飛んでしまった可能性は否定出来ない。この62.4度という超ハイプルーフが故に、開けてから固く閉じこもった状態が結構続いていたらしい。
もっと「アイラ臭かったら」言う事無しだったのに…と少々悔やんでしまう小生である。


そういった事も鑑みつつLes Meilleurs Vins de France 的な感じで点を付けるなら… 18.5 / 20



)1948年に創業した独立瓶詰業者で、その前身は海運業者だった。シングルモルトの " Old Malt Casks "、
" Old and Rare Platinum " 等のシリーズ、ブレンディド・ウィスキーでは King of Scots、McGibbon's 等の製品達で有名
2013年に将来の世代交代を睨んでという事で Stewart Laing(スチュワート・レイン=兄)、Fred Laing(フレッド・レイン=弟)の兄弟で会社を分割。兄は Hunter Laing(ハンター・レイン)を設立し独立。D. Laing は弟のフレッドが経営。




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2 Irish Malt Whiskeys ~アイリッシュ、本当はどうなんだ~

前記事でアイルランドの事にも触れたので、最近味わったアイリッシュ・ウィスキーのネタを行ってみたい。
ここ2~3年の間にアイリッシュ・ウィスキーが持て囃される様になったという話は以前にうp したが、小生としては実の所、そこにやや懐疑的な部分もあった。
最近でも25年クラスのモルトウィスキーが3万オーヴァーの価格帯で売られていて、それも結構売れた時期もあった。そういうボトルに対しての評価も一応に高いが、その中では「南国フルーツ」だの「非常にフルーティー」といった一寸聞き飽きた様な言葉が踊る。
この様な背景の下で小生は、アイリッシュのモルトから90年代初頭蒸留・20年オーヴァーの高額品と、近年デビューした蒸留所のショートエイジの物、2本の対照的なボトルを立て続けにある程度じっくりテイスティングする事が出来た。


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先ずは左画像のボトルから、
Teeling Vintage Reserve 1991 21yo 57.1% bottled for Bar Main Malt and Bar Campbelltoun Loch


今や3万越えどころか4万近くまで相場が上がっているTeeling Vintage Reserve のモルトウィスキーだが、これは2013年のボトリングなので、現在よりは価格も安かったと思われ、当時の実勢価格を推測すると18000円位だったのだろうか?
因みに、この時sa-4、sa-5 という2つの樽がそれぞれボトリングされたが、こちらはsa-4 の方である。
色はゴールド
少々のスモーキー感と土っぽさから始まり、夏の川原の様なやや蒸れた様なニュアンスのある蒼い草叢の感じ、オイリーさとエステルが顔を覗かせる。その後はカスタードクリーム、ヴァニラ、蜂蜜煎りたてのカカオBénédictine という辺りが出てくる。そして、期待通りの展開が…
パパイヤパッションフルーツグアヴァライチパインという南国フルーツが一気に出てくる、が、そこからの展開が今一つパッとしない
パッションライチパインという要素が突出して支配的になり何処か単調になってしまって、そこから中々脱出出来ずに他のエレメントが拾い出せなくなる。バーテンダー氏と話をすると、この手のアイリッシュに共通した傾向らしい。
それから時間が経って漸く黄桃加熱した洋梨、更には微かにマスカットグレープフルーツシナモンという所が拾い出せた。
味の長さという部分は一応十分なのだが、アフターに掛けての迫力が思った程ではなかったか。


酒としてのレベルは高いというのは確かだが、実際味わうと残念な部分も目立つ(T_T)
スコッチのモルトと比べると何処か垢抜けず、大きく展開出来ずやや単調になりがちというが現実なのだろうか? スコッチに水を開けられている様に見える。


スコットランドとアイルランド、気候風土は少し違うが、それだけでそんなに差が出るのだろうか?
やはりアイルランドの近現代の歩み、そしてアイリッシュウィスキーの苦難の歴史にそのキーがあるのではないか?
イギリスからの圧政に始まり、独立戦争、内戦、北アイルランド問題…、そういう中で経済の低迷が幾十年も続いた20世紀、その中でウィスキー産業も低迷と縮小を余儀なくされた時代が長かった。1920年代から減速が始まり、第2次世界大戦後アイルランドが完全独立を果たしても、上昇する事は無く低迷から抜け出すのは結局1990年代末まで待たなければならなかった。


これに対し1940年代からウィスキーの代名詞的存在として世界中に幅を利かせたスコッチにおいては、色々な改良や技術革新を積み重ねて1960年代終盤から70年代前半位に一つのピークを迎えた。その後1980年代の暗黒時代を経ても、その方向性と内容の是非は別として色々な意味での進歩を続けて今の隆盛がある。

60・70年代のアイリッシュにだって素晴らしいボトルは勿論あったが、総体的にはその進歩のペースは遅々としたものにならざるを得なかったのではないかと考えられる。そういう所からアイリッシュとスコッチで格差が生じたとしてもおかしくない。




右画像=WEST CORK Irish single malt whiskey 10yo single cask 57.3%
新進気鋭のWest Cork(ウェスト・コーク)蒸留所から遂に出されたシングルカスクで度数調整も無し。この蒸留所はDenis MacArthy・Ger MacArthy・John O'Connell の3人によって2003年にスタートした小規模な所謂クラフト・ディスティラリである。(実はKilbeggan=キルベガン蒸留所の再スタートより早かった事になる)
アイルランド南部の主要都市 Cork(コーク)から南西に80km位行った所で同島でも南の端というべき所にあるらしく、ウィスキーと平行してジン・ウォッカ・ポティンも作っている。


結論から言うと大した事ない。フルーティーさはあまり感じられないが、その反面シリアル系のフレーヴァー及びカラメル、柑橘、カスタード等の風味が目立つ。まだ荒削り感が強いが、実勢価格が3500~4000円程度という事を鑑みれば、それなりに妥協の出来る物なのであろう。

前にも述べた通り、今世紀に入ってアイルランドでも新進気鋭のウィスキー蒸留所が続々誕生しているが、ウェストコークもその一つ。失われた年月を取り戻すべく反転攻勢に出たアイリッシュ、その新時代の旗手に名乗りを挙げんと奮闘するこの蒸留所の歩みのマイルストーンとしては意義のあるボトルだと考えるべきなのであろう。
将来、15・20・25年等という中~長熟のボトルが出てくれば、どんな物になるかというのは興味深いというだけでなく、それらも新たに重要なマイルストーンとなって行くであろう。アイリッシュがウィスキーの元祖として復権して行くにはまだまだ歳月を要するのは間違いないが、スコッチがかなりチャラくなってきている今だからこそ十分に勝機はある。




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Miltonduff 1995-2016 21yo 55% The Whisky Find 威士忌坊

近年、「ボトラー」といわれる独立瓶詰業者が雨後の筍の如く出現しているが、この現象は欧米に留まらずアジアでも起きている様である。

先月中旬に三重方面に遠征したその帰り、名駅エリアのバーに立ち寄った。その際に頂いたのが、小生も始めて目にする台湾の新進ボトラーからのこの1本。
そのボトラーの名は、The Whisky Find 威士忌坊


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その台湾ボトラーからのファーストリリースに当たる「山海経」
(The Classic Mountain and Seas)シリーズ中の1本がこの
Miltonduff (ミルトンダフ)1995-2016・55%
このボトルには女媧補天という名がついている

色はやや明るめのゴールド
先ずはグラッパを想起させるグラッシーなフレーヴァー
その後開いてきて、ライチパイナップルという一寸弱めの?トロピカルフルーツ。
続いては杏仁、ココナッツ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、松の実
マカダミアナッツ
更に杏、李、花梨、ミラベル、という黄色系が出て来て、ラズベリー、赤スグリという赤系が時折顔を覗かせる。
 
一寸した収斂性と刺激感も感じさせる場面もそれなりにあったが、この酒自体のボディは結構大きめでタイトな感じは無い様に思われる。アフターの長さも申し分ないというレベルは確保している様に思える。
総体的に考えればスペイサイドらしいシェイプは比較的明瞭に出ていた印象で、かなり良く出来たスペイの佳酒と言って差し支えない。
ショットの価格から、ボトルの市場販売価格は18000円程度と考えられるが、残念ながらそこまで物とは思えない。

仮に、Les Meilleurs Vins de France 的な感じで点を付けるなら… 17.5 / 20

因みに、これどほぼ同時にリリースされた物としては、
Bunnahabhain 1990=「爽」、Glen Garioch 1994 55.1%=「后羿射日」、Glen Moray 1996 54%=「百草」、
Caol Ila 1997 40%、Cameronbridge 1995=「杜甫」というのがある様である。

ウィスキー業界内では、アジア市場のプレゼンスが拡大しているのは言うまでもないが、昔から香港やシンガポールの市場はアジアでも重要視されたと思われる。その次に日本が台頭し、近年では何と言っても中国やインドである。そんな中でも実はなかなかの存在感を見せるのが台湾のマーケットである。

伝統と実績のある欧米の老舗ボトラーでないと原酒を買うのが難しいという現状や、シングルモルトの場合は瓶詰までスコットランドで行わなければならない事もあって、アジア地域で新進のボトラーが出てくるのは極めて困難かも知れない。アジアの希少なボトラーとしてこの、The Whisky Find 威士忌坊が何処まで頑張れるか見物である。



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序の様だが、時間と金銭的な理由で頂けなかったボトルの画像も紹介したい。


このシンプルながらクラシックで雰囲気のあるラベルが小生の心を捉えかけたので、早速バーテンダーさんに質問したところ、
何と、Ardbeg (アードベッグ)のプライベートボトリングで、
1997年蒸留の18年熟成だという事だった
この時点で既にカクテル2杯を頂いていた小生としては、最後の1杯は上述のMiltonduff とこのArdbeg との二者択一という事になった。


小生としてもこれは嬉しい大チャンスと思ったが、ショットの値段はというと、Miltonduff の約1.5倍に当たる4000円との事で、躊躇してしまった。
こちらを選択した場合、折角のショットをゆっくり十分味わいたい所だが、帰京する夜行バスの時間も考えると少々難しいかも知れないと思い、Miltonduff を選択してしまったのである。

今時18年クラスのArdbeg なんてお眼に掛かれるチャンス自体少なく、1ショット4000円でというのも難しいと考えると、こちらを選択すべきだったと言う後悔が1ヶ月以上経った今でも残る



ラベルの中央の文字を見ると察しは付くが、日本国内のバー3軒と酒販業者1社の共同でボトリングされた物と判る。以前はこの画像をSNS 等にうpする事もNG だった(既に解禁されている)程の極秘ボトルだったのである。

ボトリング数が88本と非常に少ないが、話を聞けば、有名ボトラーのCadenhead がショップで樽からの量り売りしていたものの、途中で酒自体がピークに達してしまったと判断されたので、その時点で残っていた酒がこういう形でボトリングされたという事だった。



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凄いんですよ? アイリッシュウィスキー Part 2

日本のみならず世界の彼方此方でブームになっていると思われるアイリッシュウィスキーだが、アイリッシュにはモルト、グレイン、ブレンディド、そして(シングル)ポットスティルウィスキー(以前はピュアポットウィスキーの名称)の4種がある。
ポットスティルウィスキーはアイリッシュ独特の物で、大麦麦芽と大麦(未発芽)の両方、更にはオーツ麦等(これも未発芽)を加えて、それをマッシング・ウォッシングを経てポットスティルで2回又は3回蒸留するのでモルトとグレインの中間的な作り方と言えるかも知れない。
そんなスコッチにはない特徴を持った酒もアイリッシュには存在する。

前記事で述べた様に、嘗て2ヶ所にまで減った蒸留所も34箇所まで増えたが、新しく出来た蒸留所も、スコットランド同様に資金繰りに色々な工夫を必要としているのは想像に難くない。ウィスキーと平行してその他の製品を製造販売しているケースも多い。その代表例が、ウィスキーになる前のスピリッツで、POTIN(ポーティン)と呼ばれるスピリッツも注目を浴びている。
2011年にCooley(クーリー)蒸留所がサントリー・ビーム(Suntory-Beam)に買収されると、同蒸留所からの外部への原酒供給が廃止されてしまった。原酒をここからの供給に依存していたメーカー(ブランド)はピンチに陥り、自前の蒸留所を作らざるを得ない所が出てしまった。これも蒸留所増加の大きな原因である。

teeling24y464a  teeling2001sherry58a
左右ともにTeeling のボトルから
左=Teeling Vintage Reserve 24yo 46.4%=single malt Irish whiskey
右=Teeling Irish whiskey 2001-14yo Sheery cask 58% Whisky Magazine editor's selection


The Teeling Whiskey Company(ティーリング・ウィスキー・カンパニー)というボトラーは近年、左の画像にある様な25~30年クラスの長熟シングルモルト等をリリースしている。
それが同年代のスコッチモルトより評価において上回る物も多いという事となると、アイリッシュの実力は世に知れ渡り、最近のアイリッシュ人気爆発に繋がったとも言える。

先日も某酒販店で、このTeeling vintage reserve のシリーズ(25000円前後)が並んでいる所を指して、「これ位のレベルの酒をスコッチで探したら、これより全然高くなりますよ」と言う言葉を耳にした。(4万位にはなるという事か)
今まで人気が無かった分結果的に凄い樽が上手く残ったのではないかとも思った、そして同時に清水の舞台から飛び降りたつもりで手を出してみようかと気持ちが動きかけたものの、決してワイズスペンディングにはならないと思い留まった小生だった。

Teeling の親子(John、Jack、Stephen)がアイリッシュの牽引役としての役割も担っているが、親父=Johnは1987年にCooley 蒸留所を立ち上げた人物でもある。
この一家はクーリーを売却した金でダブリン市内のビール工場を買収し蒸留所に作り変えた。これがTeeling 蒸留所であり、モルトやポットに先行する形でグレインの原酒から蒸留を開始している。この背景にはクーリーからの原酒供給の廃止決定があると思われる。
ダブリンにはこの他に計画中の蒸留所が3ヶ所ある様で、全部稼動すれば4ヶ所。嘗ての「ビッグ4」には到底及ばないが、アイリッシュ中興、ウィスキーの都ダブリン復活の大きなアイコンと成るかも知れない。
嘗ての「ビッグ4」の一角だったMarrowbone Lane(マローボウン・レイン)を作ったのが誰あろう、この親子の先祖であるWalter Teeling(ウォルター・ティーリング)だった。それから200年を経た今、その子孫達がダブリンに於けるウィスキーの伝統的スタイルを復活させると息巻いているのである。(


長い間下火になっていたアイリッシュも90年代終盤から増産に転じたものと思われるが、その頃から作りも変ってしまっているのかも知れない。となると、最近の人気に火を付けた超傑作品はこの先もう手に入らなくなる可能性が高い。
何せ、最近のウィスキーは効率よくアルコールを採り、在庫の回転も速くする事に腐心し過ぎているとしか思えない部分がある。

アイリッシュの回復に対して、ダイヴァシティ(diversity)的な部分では喜んでも良いのであろうが、その一方でこんな事が続くのだろうかと懐疑的にもなる。
最近のマーケットを見ていると、ネタを見つけてバカ騒ぎして消費し尽くしたら、ばった屋みたいに又何処かに飛び移るというのを繰り返す様な気がしてならない。


アメリカでもバーボンは戦後長い間日陰の存在だった、日本がバブルの頃バーボンが持て囃されたものだが、行き場の見付からない酒が無理矢理日本に売り付けられたという背景もあったのである。
アイリッシュはウィスキーの元祖としての底力を取り戻し、バーボンを含めたアメリカ系ウィスキーと共にスコッチにどれだけ対抗出来るかという所は小生としても見物である。

Teeling が凄いのか、はたまたアイリッシュの潜在させる力が凄いのか?その答えが判るのにはこの先数年は掛かりそうである。何せ相手は酒という本来ロングスパンな時間と忍耐を強いる代物なのであるから。


)Thomas Street、Marrowbone Lane、Bow Street、John's Lane の4蒸留所がダブリンのビッグ4と呼ばれていたが、1920年代までに前者の2箇所が消え、1970年代には後者の2つも消えている。


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