Ben Riach Distillery 身売りの話Part 3 まで来た訳だが…

ウィスキーを含めたハードリカーの世界は御存知の様に、巨大資本のコングロマリットによる寡占化がここ数十年で進んでいる。
その中でもスコッチウィスキーの世界は昔からその傾向が強かった様に見える。その証拠に何せ、嘗てのDCL(Distillers Company ltd.)1920年代で既に圧倒的な大勢力に伸上がっていた。
それが1980年代以降の世界的な業界再編でUDV=United Distillers and Vintners 等を経て今のDiageo- Moët-Henessy (ディアジオ・モエ・ヘネシー)=世界最大手となっている。そしてこれに続くのが、Pernod-RicardBacardiBeam-SuntoryBrown-FormanWilliam Grant and sonsCampariEmperador という辺りである。


jdsb01抑々、ハードリカーでビジネスするには大変な資金力が要る。醸造した上にそれを蒸留するだけでもワインより全然大変である。これがウィスキーやブランデーともなれば、数年から数十年の熟成を経ないと商品化出来ない。そこで膨大な数の樽をストックしなければならない事になるから特に資金力がモノを言う。

今のハードリカーの市場はどうしても大手ブランドのパワーゲーム国獲り合戦の様相を呈してしまい、画一化の圧力が目立ってしまうのは仕方が無いと言える。
大手資本+ブランド力→出せば売れる→さらに巨大化するという展開である。そして最終的に商品の質はそんなに大きな問題ではなくなるとまで言えてしまう(あくまでも極論すればという事だが)。
ハードリカーの世界は結局ブランド力が全てみたいなものだというのも事実である。


それこそ、Brown-Forman の大黒柱であるJack Daniel's なんて今や世界中、犬でも猫でも知っている様な位の超有名ブランドである。
巨額な広告宣伝費を「投資」してブランドを拡大し、世界中に販売網を広げられる巨大メジャー企業の独壇場になり易いのが現在のハードリカーの世界だと言える、
(画像はJack Daniel's Single Barrel for Shinanoya これは結構美味かった)


ワインの世界は今やハードリカーより市場のパイが大きく、法律で保護されている産地だけでも何千何万とある。ワインの世界も作り方等が画一化しているのは事実だが、それでも多様性はハードリカーの比ではない。(ワインとハードリカー、画一化と言ってもその内容が違うというべきか)

それだけ、中小の資本でも生き残れる隙間はまだ沢山あるという事にもなる。ワインの世界でも大資本がその勢力を広げてはいるが、巨大資本と言える様な所は少ないから、マイナーパワーが闊歩している世界だとも言える。 ワインとハードリカー、双方の市場を比較すると、決定的に違う部分が有るのである。
ハードリカーに於いても、更なる多様性を求める消費者は多い筈であるが、画一化させる力が圧倒的に大き過ぎるのが現状である。

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左=Ben Riach 1984-2006 peated 21yo 55% Oroloso Sherry butt
右=Ben Riach 1994-2010 15yo 55.4% PX Sherry puncheon


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左=Glendronach 1995-2014 18yo 54.8% Oroloso Sherry Puncheon 
          for Liquors Hasegawa, Kinko and Shinanoya
(去年、キンコーから購入)
右=Glendronach 1988-2004 15yo 59.4% Sherry butt Cadenhead's Authentic Collection (京都市内で購入)           
本来は東ハイランドの蒸留所なのにラベルではSpeyside と書いてあるww


ここ数年、世界各地でクラフトディスティラリーと呼ばれる中小の資本によるインディペンデントな蒸留所が雨後の筍の如く産声を挙げている。リキュール等でも質の高い物を作るブティック的メーカーが注目されてきている。既存蒸留所の買収とはいえ、ビリーの活躍がインディペンデントな蒸留所やメーカーを多少なりとも勇気付ける存在になっていたのかも知れない。
スウェーデンでは、クラフトディスティラリーとして1999年に創業し、一躍名を上げたMackmyra(マクミラ)も2013年に従業員削減などのリストラを余儀なくされた。当時で累積赤字が3000万クローナ(当時のレートで5億円程度)を超えてしまっていたらしい。
スコッチでもインディペンデントな蒸留所として頑張って来たJim MacEwan(ジム・マッキュワン)氏のBruichlladdich(ブリックラディ)も多額の負債に耐えられず、大手資本のRémy Cointreau(レミー・コアントロ)に身売りしてしまった。 こういう例を見ると、ビリーの所も目論んだ程には儲からなかったのかも知れない。

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arr98546a上段左=Glenfarclas 1989-2006 16yo 56.3%
昔は高価なFamily Cask シリーズ以外でもヴィンテージ入りでカスクストレンクスというのは結構手に入ったのである。最近は46度加水の奴が多過ぎて困る。

上段右=Springbank 1997 batch1 55.2% (released in 2007)
内側を焦し直したSherry butt で10年熟成。11000本限定マスターディスティラーであるFrank MacHardy とマネージャーのStuart Robertson が原酒をセレクトしたおかげで世界的に高評価だったらしい


下段=The Arran 1998 17yo 54.6%      
refill Sherry cask for Shinanoya
Arran 蒸留所の20周年を記念しての信濃屋プライベートボトリング。小生もこの春入手した


世界各地に現れている新進のインディペンデントな蒸留所やメーカーが今から10年後に残っている可能性は高くないと考えるべきである。 新しい地場産業として期待される所もある一方、地元の反対や環境アセスメント等の理由で計画自体が失敗に終わるケースも多い。



国内でいえば堅展産業厚岸蒸留所(今年度内に操業開始予定)のケースでも、北海道の全ての自治体へオファーを出した中で、蒸留所計画を受け入れたのは厚岸町のみだったのである。

 
高評価のフレンチ・ウィスキーとして名を上げたCeltic Whisky Compagnie はスコットランドに進出すべく、去年夏にGlann ar Mor(グラン・アー・モー)蒸留所を閉鎖して()、Islay(アイラ)島にGartbleck(ガートブレック)蒸留所を立ち上げようとしたが、頓挫して事実上失敗
何と言っても地元の反対が強かったからである。平穏だったアイラの島が昨今のウィスキーブームで騒がしくなった所に、蒸留所が増えるのはNG という事らしい。


そういう中でも、インディペンデントな蒸留所でも大手資本に巻き込まれず、脈々とその流れを築いている所だってある。SpringbankGlenfarclas はインディペンデント蒸留所の2大巨頭である。よって、今のインディペンデントな所について100%悲観する事も無いと思われる。
将来、Springbank やGlenfarclas の様な名門に進化する所が出て来る事を希望する今日この頃の小生であるが、先ずはThe Arran に期待である。最近のArran は良くなってきていると思う。
マイナーパワーが活躍してこそ豊かで文化的な世界になるのだから。 その生き残りのキーワードがあるとするなら、alternative(オルタナティヴ)としてその存在を確立出来るかという事なのかもしそうであれば、皮肉だがalternative が最も生まれ難いのが実はスコッチウィスキーではないかと思われる。あまりにも伝統的過ぎるのである。



)Jean Donnay(ジャン・ドネ)氏率いるCeltic Whisky Compagnie が、Bretagne(ブルターニュ)地方のPleubian(プルビアン)という街で1997年に創業させたのが、Glann ar Mor 蒸留所。 2008年に蒸留所と同名のノンピート麦芽のウィスキーをリリース。翌2009年にピート焚きモルトのウィスキー=Kornog(コルノグ)をリリース。この会社はボトラーとしてスコッチやアイリッシュのウィスキーを独自で瓶詰販売もしている



※ この記事は旧ブログからの移転記事につき、旧ブログにてアップされた時点(Jul. 2016)での事実関係に基いて書かれているので、現在の事実関係とは大きく異なる場合があっても何卒ご了承賜りたい。



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