近年大人気で品薄のIslay 島(アイラ)のウイスキーだが、此の島のウイスキーは一般的に、ピーティーでスモーキー(要するに、主に泥炭由来の強い燻煙香があるという事)というイメージがある。それがやたら受けるのか、価格高騰も激しく入手困難な傾向も強まっている。
アイラなんて淡路島程度の大きさで、蒸留所も現在8ヶ所しかない上に小規模な所が多く、生産量にも限界がある。この島のウイスキーの代表選手として一番人気なのは、 Ardbeg (アードベッグ) という事になるのであろう。

今のこの人気沸騰ぶりは20年前を思うと信じられないものがあるのではないか。 1979年から97年の間は苦境に立たされ、生産停止も経験し、年産数万リットル程度の細々とした活動を強いられた時も長かった。
アードベッグ自体の規模が小さく、蒸留機も一対のみ。今は超頑張って年産110万リットル(アルコール換算)を維持しているが、世界的人気には全く追いつかない。よって、ボトラーズから出る事は少ないし、出ても恐ろしい価格だったりする。
 

smws33133a先日、 SMWS (サ・ソサエティ)からこのアードベッグの鮮烈な一本が出て来たのである。そして小生、SMWS 会員の一人として、テイスティングする機会に恵まれた。

SMWS 33.133 8yo 60.8%
33は勿論Ardbeg を示す
コードソサエティはArdbeg で133回もリリースしているという事になる。


色は赤みのあるブラウン 香りを嗅いだだけで、一発で Ardbeg と判る。この時点で期待大!
言うまでもなく、ピーティーな煙感もガッツリ! ショートエイジながら、シェリーがダークトーンを足して且つ丸く収めて締めている。ショートエイジの荒々しさは見えるが不快な感じはしない。鰹出汁、昆布出汁、ベーコンソーセージフレッシュのローズマリー、黒胡椒、シリアル、煎りカカオ、焚火、煙草炒りたてのナッツといった辺りの風味が見て取れ、微かなグラッシーさも垣間見える。


2nd fill Sherry でありながら、ブラックチェリー、ブラックベリーエスプレッソ、Cognac、ダークチョコ、黒文字等のエレメントを以てシェリーはしっかりサポートする。 60度を超える超ハイプルーフという事もあって、兎に角強烈なのは明らかだが、引きそうで引かない、終りそうで終わらない、ボディとフレーヴァーが五感にしっかり刺さる

酒としての完成度は高いと見えた。この部分、シェリー樽の貢献度が大きいのは明らかだが、ベースにはこのウイスキーの素性の良さがある様に思える。

画像とテキストではなかなか伝えられないのがもどかしいが、迫力は大層なもので、同時に剛直さと美しさが同居しているのは感動モノである。ある投手が以前、「火の玉ストレート」なんていう謳い文句を掲げていたが、 これこそ「火の玉ウイスキー」と呼ぶべき一本ではないか。

仮にLes Meilleurs Vins de France 的な感じで点を付けるなら… 18~18.5 / 20

 

アイラから産み出される「強烈火の玉系」ウイスキーは他にもあるといえばあるのだが…    

klch5y599a  pcl2002yama01

左= Kilchoman 2009-15 5yo 59.9% Sherry cask ・信濃屋向け
右= Port Charlotte 2002-10 8yo Yamaoka/Sakamoto Selection 65.3%


Kilchoman はカスクタイプを問わず殆ど同じ味になってしまう。5年程度の超ショートエイジが殆どという事もあってハウススタイルとニューメイクの味が前面に思いっきり出てしまう。良く言えばハウススタイルが決まり過ぎている。又非常に丁寧に手を抜かず真面目に作っているのは良く判る。
このボトルの場合、シェリー樽でここまで上手く纏めてしっかり作ったものだと思う、ただ12000円という価格は一寸頂けないが。


Port Charlotte も8年という割に熟成感があって、意外とバランスも良い。65.3度という度数をそこまで感じさせない酒だったと記憶している。

この両者、かなり佳い酒であるが、前出のアードベッグ= SMWS 33.133 と比べてしまうと、もう一押し二押しが足りない様に思えてしまう。
「火の玉」度がまだ足りないと見えるのである。裏を返せばアードベッグに一日か二日之長があるという事でもある。この一日二日分が将来縮まるのか否かは如何とも言えないが、縮まれば面白い事になるかも知れない。




本題の SMWS 33.133 に話を戻して… 実はこのボトル、25日正午に発売となったが…、案の定、ほんの一瞬で完売!
日本への割り当てが何本だったかは判らないが、今回は買占めを防ぐためにSMWS サイドもルール変更をして、色々制約を付けたので、少しは買いやすくなるかと思ったが、それも殆ど効果なし。
このArdbegの他、Bunnahabhain(10.86)、Clynelish(26.111) も一瞬というより一刹那で、同時発売の他銘柄も殆どが数十分以内に売り切れ。


以前この SMWS のボトルは割高とされてあまり人気が出なかった。日本でメンバーを募っても数が延びなかった時期もあり、数年前には入会金割引でボトルもプレゼントという大盤振舞のキャンペーンまでやったのである。小生も実はそのボトルに釣られて入会したのであったが、そのおまけのボトルが北海道の某老舗蒸留所の18年だったというのは今では信じられない話である。
ところがその後、ボトラーズのモルトは一気に高騰し、結果的にはソサエティのボトルが良心的価格という事になってしまった。てなわけで、一気にメンバーが増えて、ボトルの競争率も跳ね上がったという事も背景の一つらしい。



Islay のウイスキーについて序にもう一言言えば、此の島の中でも以前は蒸留所毎にキャラの違いは鮮明で、ブラインドでも蒸留所を言い当てられる可能性があった。なのに、近年は画一化してその違いは曖昧になっている。
Bruichladdich やBunnahabhain は本来アイラのイメージとは一線を画す穏やかな酒質だったのだが、この2つでさえ近年はピーティな傾向に変った。
あるバーで女性客がLaphroaig (ラフロイグ)をボトルキープして飲んでいる光景を目にして驚いたのが8年位前のことであった。
アイラのモルトでさえ、妙に甘ったるく、且つ判り易い味に無理矢理作っている様な酒が目立つのには呆れるばかりである。




※ この記事は旧ブログからの移転記事につき、旧ブログにてアップされた時点(Mar. 2016)での事実関係に基いて書かれているので、現在の事実関係とは大きく異なる場合があっても何卒ご了承賜りたい。

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