ここの所忙しく、バタバタとして当サイトの更新も儘ならなかった小生であるが…
シェリー(Sherry)と云っても、どういう酒かを良く御存じない御仁も多かろう。

シェリーとはスペインの地名、Jerez(へレス)の英語読みである。この地名を聞いて昔のF-1 スペインGP を思い出す方は結構なオッサン(オバハン)www(註1
この地は元々、ヘラ(Xera)という名であったが、アラブ人の支配を受けた時代からSherish=シェリッシュとも呼ばれる様になった。それからスペイン語でXerez、Jerez と呼ばれ、英語ではSherry、フランス語ではXérèz となり、この酒のD.O.(denominación de origen=産地統制名称)はJerez-Xérèz-Sherry と3ヶ国語併記の珍しい形になる。


スペイン南西部はアンダルシア地方にある以下の3区域で産出されるフォーティファイドワイン(酒精強化ワイン)で法に定められる一定の要件を満たす物がシェリーを名乗れる。
その3地域とは、Jerez de la Frontera (へレス・デ・ラ・フロンテラ)、El Puerto de Santa Maria (エル・プエルト・デ・
サンタマリア)、Sanlùcar de Barrameda (サンルカル・デ・バラメダ)


作り方の基本を簡単に言うと、ワインに葡萄由来のアルコールを添加して度数を上げてから熟成させる。
使用される葡萄は、Palomino(パロミノ)Pedro Ximénez(ペトロ・ヒメネス 通称PX)Moscatel(モスカテル) の3品種だが、パロミノが9割を占める。そして何と言っても、ソレラシステムによる熟成方が何と言っても特徴的である。バット(butt)やパンチョン(puncheon)と呼ばれる500リットル程度の樽が、3~5段程度に積み上げられる。その樽は腐敗防止の為黒く塗られていて、他のワインと違い樽の中には容積の75%程度の量しか満たさない。25%程度を空間にしておくのはフロールの生成若しくは酸化熟成を促すためである。(註2


熟成が終り瓶詰される酒は最下段の樽から抜き取られる。一度に抜き取られるのは樽の中の数%程度の量である。抜き取られた分の補酒はその一つ上の段の酒で行う。
補酒の為に抜き取られた分は又更に一つ上の段の樽から行う。最上段ではルーキーともいうべき酒が補われる。酒は熟成を重ねながら上から下に段階的に送られ注ぎ足される事になるので、上の段には若い酒、下に行く程熟成が進んで行くという形になる。
このシステムにより、製品の質的なバラつきを抑え、一定の品質を担保するという効果が得られる。


 

caballero01

シェリーを語る上で避けて通れない名門で大手の一つ、Luis Caballero (ルイス・カバジェロ)のシェリー達この生産者はシェリーに留まらず、ブランデーやリキュール類まで幅広く手掛ける。

barquero01

Perez Barquero (ペレス・バルケロ)、ここも亦優秀!
ここの蔵はパロミノ種を使わず、専らP.X. 種を採用しているのが特徴。この蔵のあるMontilla (モンティージャ)という場所がP.X. の育成に適しているからという事らしい。 P.X. 種は非常に糖度の上がる品種であるので、酒精強化無しでも15%を超えるアルコール度数が確保出来る。

 
diozbaco01

Dioz Baco (ディオス・バコ)は19世紀半ばから続く蔵。ラベルは少々派手めだが、酒は派手さは無いものの、優秀なバランスを持つ。買って損は無い銘柄!

 

シェリーという酒に関して、フロールという言葉を聞いた事があるかも知れないが、本来は花という意味だが、この場合は酸膜酵母と訳される。
モストを発酵させワインにするとその過程でこの膜が張る。通常のワインならこんな膜が出来ると完全な失敗となるが、これがシェリーにとっては決め手になるのである。
澱引きの後酒精強化となるが、フロールがしっかりしているの物はフィノとなり、アルコール度数16度以下に調整される。
フィノにならなかった物は18~20度に調整されオロロソに回る。フロールが存在出来る限界となる度数が16度あたりであり、オロロソの場合、この膜を消し酸化熟成に持って行く。その途中での腐敗を防止するという意味もあって18~20度まで酒精強化を行う。


シェリーは、以下のタイプに大別される。
Fino(フィノ)
シェリーの大多数がこのタイプ。全体の80%程度がこれに入る。フロールの下で酸化を防ぎながら熟成される。辛口でシャープ、軽やかな風味の物が多い。
Manzanilla(マンサニージャ)
フィノの内、Sanlùcar de Barrameda で作られ一定要件を満たす物。

Amontillado(アモンティヤード)

途中までフィノだったが、フロールが壊れる等して、酸化熟成に持っていかれた物。悪い言い方をすればフィノ崩れという事にもなるが、フィノの繊細でシャープな部分とオロロソの様なコクと熟成感の中間的なキャラを持つ。
Oloroso(オロロソ)
フロールが出来なかった物や意図的のその生成が阻止された樽で、18%位まで酒精強化され長期熟成されたタイプ。長期に渡る酸化熟成で色は褐色になり、コクと香りの高さが持ち味。基本は辛口だが、甘口も存在する。
Palo Cortado(パロ・コルタド) 直訳すると切られた棒となるが、フィノの樽には一本の斜線が付けられる。それがP. コルタドに変化し始めると、その斜線を切る様にクロスする線を書き足すという所からこの様に呼ばれる。偶然が重ならないと出来ず、意図的に作れないタイプのシェリー、
生産量も当然少ない。フィノ崩れからアモンティヤードも通り越してオロロソの一歩手前まで行った物というのが妥当か。FinoAmontilladoOloroso の3者のキャラを併せ持つ不思議な酒となる。
その不思議さ故、" El Misterio del Palo Cortado " なるドキュメンタリーフィルムが存在し、去年日本でも公開された程である。


ここまでがVinos Generosos と云われる辛口タイプだが、下記の様なDulces Naturales=天然甘口のタイプも存在する
Pedro Ximénez(ペトロ・ヒメネス) 同名の葡萄を陰干しし、糖度を非常に高めて作る。発酵終了時点で相当なレベルの残糖があるため甘口となる。
Moscatel(モスカテル) 製法はP.X. と同じ、これも甘口。


Vinos Generosos de Licor という辛口甘口を混合して作る物も存在する。

 

ここで、シェリーにピッタリな料理も紹介したい。

callos01
 
マドリード風の牛モツ煮込み、callos(カジョス)
2011年秋、三条京阪KYOUEN 内のLa Gallega(ラ・ガジェガ)にて(サイトは
こちら
モツの類が食えないという御仁も結構多いと聞くが、それは人生に於ける大きな損失であると思わずにはいられない小生である。


シェリーの魅力をディスカヴァーして、その生産が今一度盛り上がり、良質な物がもっと生産される様になる様に、我々も気合を入れてシェリーを応援すべく、購入を増やして行きたいのだが…
こんな伝統ある魅力的な酒を当のスペイン政府は推さない、これが不思議である。
シェリーは世界の潮流から取り残されて、推しても商売にならないと踏んでいるのであろうか?
以前はアンダルシア製品展示会なるイベントが東京で毎年4月に行われた時期もあったが、2013年以降行われていない。


てな訳で、Part 3 へと続く!

追記 : アンダルシア製品展示会は2015年に再開
 

註1)F-1 が開催されたのは1986~90年(スペインGP)、94・97年(ヨーロッパGP)の7回のみ。1990年にM.ドネリー(Martin Donnelly)が重大なクラッシュ事故を起こしたのを契機に、91年からカタロニアでの開催となった。 1986年はA. セナとN. マンセルが0.014秒差でフィニッシュというF-1 史上最大の接戦となる。又、97年にはM. ハッキネン(Mika Häkkinen)が初優勝を記録している。二輪では99年WGP 予選でM. ドゥーハン(Michael Doohan)が重大な事故を起し選手生命を絶たれている。
註2)ワインを樽に入れて熟成する時は、酸化が進まない様に容量ギリギリ近くまで満たす事が常識となっている=空気に触れる面積を減らすため。

 

※ この記事は旧ブログからの移転記事につき、旧ブログにてアップされた時点(Jan. 2016)での事実関係に基いて書かれているので、現在の事実関係とは大きく異なる場合があっても何卒ご了承賜りたい。

当サイトは画面右側の各種ランキングに参加しております。御訪問の序でにその中のどれか1つでもクリックを頂ければ幸いです。