sun-hbk505aジャパニーズのモルトウィスキーが最近品薄&入手困難になってきているのは先刻ご承知であろう。
その最たるものが埼玉のイチローズモルトだが、サントリー・山崎、白州も負けず劣らず、ニッカの余市、宮城峡も今や世界的な人気で争奪戦の様相を呈している。
そこで、原酒のストックがこれ以上逼迫しない様にこの異常なまでの人気を抑えるという意味合いもあって今年続々と大幅値上げがあったのである。
 
この需要拡大を追い風になる様な形で、この国内でもモルトウィスキーの蒸留所が続々と産声を挙げている。嘗て鹿児島にあったマルス(本坊酒造)が長野で復活し、間もなくガイアフローが静岡蒸留所を、堅展実業が厚岸蒸留所を稼働させ、岡山市では宮下酒造が同社 100周年記念事業としてウィスキーの蒸留を既に開始している。
 
そしてモルトと同時に同時にブレンディドの方も世界的な人気で品薄になる可能性が高い。特にサントリー・響は彼方此方で賞を受賞して凄い事になりそうな感がある。 今や日本国内でジャパニーズがスコッチより入手困難になるという逆転現象が起きているのである。

(左の画像はサントリー・響17年  しかも今や幻となった50.5%のヴァージョン)

日本のモルトが人気になるのは判る、この人気がブレンディドウィスキーまで波及する背景には、 スコッチのブレンディドウィスキーはドンドンレベルダウンして、今やジャパニーズの方がマシだと感じる消費者が世界的に増えているとすら思えてならない
 


sunchita01先日小生がここで述べて来た事を検証する機会に恵まれた。
某・信〇屋が銀座で開催した同社創業85周年記念の展示会に足を運べた。同社が取り扱う酒類・食品類のみならず、取引先各メーカー・インポーターも出展されていた。ただ、入り時間が遅れてしまった為あまり時間が無い中で、テイスティングしたいアイテムは何とか一巡出来た。

そして、最後にサントリーのブースに駆け込み、新発売のグレインウィスキー、知多を試す事が出来た。
年数の比較的短い原酒を使っているのであろうが、その味自体、取り立てて何かがあるとまでは言えないが、ウィスキーとしてはそれなりに成立している。シングルグレインとしてリリースした判断は間違いとは言えず、ジャパニーズグレインの可能性すら垣間見せてくれた様にも見える。

サントリーは2013年から白州でもグレインウィスキーの生産を開始した。そこでも知多同様、色々なタイプの原酒を注意深く作り分けている様である。ニッカには宮城峡のコフィスティルがあり、キリンの富士蒸留所ではグレイン蒸留用に全く形の異なる3つのスティルを使い分けていて、バーボン蒸留用のビアスティル+ダブラーもある。 サントリーの関係者は「グレインは出汁の役割をする」と説明している。

一方、スコッチの世界ではグレインはキャンバスと呼ばれる。ブレンディドウィスキーのベースはグレインという事である。 少なくとも今まではジャパニーズに対する需要が高くなかった事も幸いしてか、それなりにはきっちり作っていたと思われる。これがジャパニーズウィスキーの世界的評価を押し上げた重要な要素の一つになったとも考えられる。

kaw82654  ivgdn65denny431

(左=川崎シングルグレイン1982-2009 65.4% Ichiro's choice=ベンチャーウィスキー 註
(右=Invergordon 1965 40yo 43.1% Clann Denny=Douglas Raing

歴史を見れば、モルトウィスキーが先に産声を挙げた。グレインの生産が本格化したのは19世紀半ばからである。グレインウィスキーもスコッチである(要件を満たせばという事だが)という司法の判断を受けて、モルトとグレインをブレンドして大幅にコストダウンを行いスコッチウィスキーの普及が一気に進んだ
それでも、Blend とは薄めるという意味ではないコストを下げるという意味でもない、 Blend とはあくまでも混合するという意味である。

wh80s01古い時代のブレンディドを飲む度に感じる事だが、ブレンディドにはモルト、グレイン単体では出せない世界が存在したのは確かである。グレインというキャンバスにモルトで描く絵画である。 グレインが糞ならブレンディドも又糞になるのは自明の理。モルトまで糞になって来ているのだから輪を掛けて糞と言われて反論は出来まい。

「モルトだけだと飲み難いのでグレインで飲み易い様に薄めたのがブレンディドウィスキー」という説明をする人間もいるが、それは間違いである。今は薄いモルトが糞なグレインで思いっきり薄くなっているのは現実だが、それは結果の問題である。飲み易いのとスカスカなのは違う。

現行品のブレンディド・スコッチを飲むと、嘗ての2級か、それこそ戦前の模造酒(飲んだ事ないがw)かと錯覚してしまう様なケースさえある。(多少言い過ぎかも知れないが…)
因みに、ジョニ黒の国内価格… 昔は1万円超、今は2千円台前半。昔と今では為替・流通・税制等が全く違うから簡単に比較は出来ないが、安かろう悪かろうになったのかという印象は拭えない。
ウィスキーメーカーのブレンダーは天才的な味覚嗅覚を持っているのは認める。嗅覚が犬並みかとすら思う場面もある。そんなブレンダー達を以てしても、原酒が悉く糞というのでは手の打ち様もあるまい
 
(隣の画像はWhite Horse・43%・恐らく80年代始めか)

 
優れた物が売れるのではなく、売れた物が優っているのだ今の世界はこういう風潮であり、この論理には正しい一面もある。
利潤を挙げれば官軍であるが、売り易い物、利幅が取れる物ありきではない筈である。

本当に優れた物を作り出す事が第一義でなければならない。
高額なだけの糞ウィスキーも要らぬ! 
高額なだけの糞ワインも要らぬ!
物の価値を真剣に考えなければ人類の文化も文明も木端微塵に飛ぶぞ
、そのうちに!



)三楽オーシャンが1969年に川崎市川崎区で稼働を開始したグレインウィスキー蒸留所だが、閉鎖は1990年代初頭と思われる。
メルシャン山梨ワイナリーで保管されていた川崎の原酒を、埼玉のベンチャーウィスキーが購入し製品化したのがこの川崎シングルグレイン



※ この記事は旧ブログからの移転記事につき、旧ブログにてアップされた時点(Nov. 2015)での事実関係に基いて書かれているので、現在の事実関係とは大きく異なる場合があっても何卒ご了承賜りたい。

当サイトは画面右側の各種ランキングに参加しております。御訪問の序でにその中のどれか1つでもクリックを頂ければ幸いです。