先日、カルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)の逃亡先として有名になったレバノン(Lebanon)がデフォルトを宣言した。9日に償還期限を迎える外貨建て国債・12億米ドル分の支払いを見合わせるという事である。
レバノンという国、財政危機は今に始まった事ではない。GDP の150%に当たる債務を抱えていたが、それ全部ドル建て。
(日本政府の債務はGDP の280%と見積もられるが、その殆どは円建てで債権者のかなりの部分は自国民という事で同列に扱う事は出来ない)
同国の通貨はレバノンポンド(LBP)でレートはアメリカドルに固定されて、表向きは1:1500だが裏ではLBP が暴落し1:2500になっている模様である。1US$=108円と計算すると1LBPが表向きで0.072円、裏では0.043円という事になる。


レバノンという国、何せ真面な産業がない!
中東地域にありながら、石油は採れない。金融と観光でそれなりに生きていた様に見えるが、長い内戦で国土が荒廃した影響もあるのか、鬼の様な政治腐敗もあって最近では金融と観光も振るわない様だった。
それでも国外のレバノン人からの送金による国内への資金還流はかなりのレベルだったので、1人当りのGDP は一昨年で9200ドル程度と中堅レベルの数字である。でも政治行政公共サービスには資金がない!
市民の日用品でさえ殆ど輸入するしかない、自国で作る事はままならないからである。今回のデフォルトは止むを得ない措置だった。国債償還で少ない外貨を吐き出すと、日用品さえ手に入らなくなる危険性が高いからである。


この国は長い事内戦が続いてきたのでも有名で、これがこの国の惨状を生み出す最大の元凶といってよい。
1975年からの内戦だが、これは1949年のパレスチナ内戦と1970年のヨルダン内戦の続編みたいな部分がある。1943年の独立以来キリスト教・イスラム教間での対立が後を絶たなかった。マロン派(Maronite Church)キリスト教勢力(ファランジスト)とPLO を中心としたパレスチナ勢力の間で始まったこの内戦は、途中からシリアが乱入しファランジストと共にPLO を叩いて終結させるかと思われたが、同国内に残ったPLO とパレスチナ勢力を一掃すべく1982年にイスラエルが乱入し、PLO はチュニジアに追いやられたがその間に、ファランジストがパレスチナ難民キャンプを襲撃して大量虐殺を行った(サブラー・シャティーラ事件)。

その後は同国南部を中心にヒズボラが台頭し、内戦状態が収束する事は無かった。80年代後半からはシリアが度々介入してシリアと反シリアのアウン派(キリスト教マロン派主体)の戦いとなったが、シリア軍がアウン派を掃討して同派主導者で首相でもあったミシェル・アウン(Michel Aoun)は亡命(2005年に帰国してレバノン現職大統領)。1990年10月に一応の終結を見たが、シリアの属国みたいな状態がその後も続いて2005年の「杉の革命」に繋がっていってしまう。


2005年2月14日、ラフィーク・B. アル・ハリーリ首相がベイルート市内走行中に大規模爆弾テロで暗殺され、それをきっかけに宗教人種を超えたシリアへの抗議運動が全国で激化して親シリアの政権が倒れ、4月にラフィーク・アル・ハリーリの次男であるサード・D.R.・アル・ハリーリを中心とした3月8日同盟が反シリア政権を打ち立てて、シリア軍は撤退。
ところがその翌年、ヒズボラがイスラエルに侵入するとイスラエル軍が侵攻、それを受けて国連で停戦決議が採択されて停戦レバノン暫定軍が展開してイスラエルは撤退。2006年の時点でこうだったのだが、政治腐敗は改善されない状態が続いている。


ogosesakura2k19a
(レバノン政府もカルロス・ゴーンもサクラサクにはならない?)

近年ではラフィーク・ハリーリ時代から続く宗派均衡政治による腐敗と財政悪化が常態化していて、最近では観光地も閑古鳥が鳴いていて、反政府デモが頻発して政情不安に拍車を掛けている。去年10月29日には前出のサード・アル・ハリーリ首相が辞任している。
外貨をアホ程貯め込んでいる一部の上級市民達は今の所安泰であろうが、それ以外の国民生活は更に疲弊する事も予想される。今回のデフォルトを通じて、アメリカドルに対して固定だったLBP も完全変動相場制に移行せざるを得ないという指摘もある。
それでも1人当りで9200ドルという一見そんなに貧しい国ではないのに、どうしてそんなデフォルト起こしてしまうのだろうか?


てなわけで、其の弐へと続く!



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