先日、50年以上前に出回っていたと思われるシェリーが売られているのを首都圏某所で発見した。でもそれは何処で保管されていたかも判らないボトルである。そこでの売価は1200円程度だったが、普通の神経なら敬遠する筈である。仮にそれが良好な環境で保管されていたとしても。
この如何にも古めかしさ爆発オーラたっぷりというボトルを見逃して帰る訳にも行かなかった。この貫禄あるボトルなら被写体としては十分で、売価を考えれば飲めたら儲けものという位の考えで購入したのであった。


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この Dry Sack (ドライ・サック)なる銘柄だが、Williams and Humbert (ウィリアムズ・アンド・ハンバート)による複数のタイプの原酒をブレンドして作るタイプの物で、銘柄自体のデビューは1906年(日本では明治時代)とされる
ブレンドされているのは Amontillado、Oloroso、PX の3種で、決してマニアックな物でも高級品でもないスタンダードな普及品である。オランダやドイツではミディアムタイプシェリー(中口から少し甘口くらい)の草分けとされ、ヨーロッパの広い範囲で今でも販売されている。
ヘレス・サーキット(Circuito de Jerez)にこれの名が付いたヘアピンがあるのを思い出される方々もおられよう。


このタイプのシェリーは殆ど飲む事が無い小生ではあったが、購入から約半月後の今月上旬に明けて飲んでみたのであった。現在売られているボトルの場合、その栓はハードリカーと同じ様な物が使われている場合が多い。円盤状のプラスティックに短いコルク栓が付いているタイプ、若しくはスクリューキャップである。ところがこいつの場合、亜鉛と思われるキャップシールを剥がすと、普通にワイン用のコルク栓が打ってあった。
約半世紀を経ていると思われるボトルであるからそのコルクの状態が思いっきり不安である。でも、ここまで来て抜かない訳にも行かないと思った小生はソムリエナイフで抜く事を決意。
ドキドキの中でやってみたその結果…、何と思いの外スムーズに壊れる事無く抜けてしまい少々拍子抜け
コルク自体はかなり短めの物であったが、譬えスタンダードなボトルでもこの時代の物は良質な物が普通に使われていたとしか思えない。


斯くして第一の関門は突破したが、果たしてそんなボトルが飲めるのか?
当初からポジれる要素はあった。それはベースになっているのが酸化熟成を長期間施したアモンティヤードとオロロソであり、度数も19~20%であったという事である。これが若し度数が15%程度でフロール熟成のフィノだったらまずお陀仏していたと思われた。


結果はというと…、普通にちゃんと美味しく飲めた
色は酸化熟成系のシェリーらしく、結構深度のあるマホガニー。ボトルの内部や底には澱がタップリ固まってへばりつく様な状態ではあった。3回に分けて飲んだのだが、途中から澱が入ってしまい濁る様になったのでペーパーフィルターで濾しながらグラスに注ぐ様になった。
味自体は然程甘い様には思えず、それでもPX (ペトロヒメネス)がしっかり効いている印象だが、特に香りに於いてはPX の主張が強かった。よってPX がブレンドされている事で「相当助けられている」と言えよう。
Palomino (パロミノ)種から作られるアモンティヤード・オロロソの原酒だけだったらここまで美味しく飲めただろうかという疑問はあるが、同時にその裏でPX という葡萄の持つ能力の高さを証明する事にもなった。
1950・60・70年代辺りに作られた酒の生命力って、ハンパないヤツが多い! 頭では分かっていても改めて実際に体験するとそこはビックリするものである。
当たるも八卦当たらぬも八卦ではあってもオールドボトルは止められなくなる小生である。





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