高岡は銅器の街といっても差し支えなく、その歴史は約400年にもなる。そして最近、世界的に所謂クラフト蒸留所が雨後の筍の如く出現している。実を言うとそこで使われるポットスティル=単式蒸留器が高岡銅器を覚醒させるかも知れないのである。クラフト蒸留所だけではなく、メジャーな既存の蒸留所にも広がって行く可能性も将来的には否定出来ない。

その先陣を切るのは砺波市にある若鶴酒造で、世界初の鋳造ポットスティル 2基(容量は共に3000リットル)が稼働しようとしている。若鶴酒造は1862年(幕末で生麦事件のあった年)創業で日本酒・ウィスキー・米焼酎・リキュールを生産販売するだけでなく、北陸コカ・コーラボトリングを傘下に収める会社でもある。廃れかけたウィスキー部門を再興し、クラフトウィスキー蒸留所として新たなスタートを切った三郎丸蒸留所として注目を集めている。3年前に「三郎丸1960シングルモルト55年」を、1本55万円で売り出した事で大きな話題になったのは記憶に新しい。
現在この会社がウィスキーを蒸留するのは 6~9月のみという事なので、稼働は来月以降になりそうである。同社のメインはあくまでも日本酒であるので、ウィスキーにばかりリソースは割けないからと思われる。


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高岡の隣の砺波に所在する若鶴酒造のハードリカーである。同社は1952年からウィスキーの製造を行ってきた。
左は三郎丸のニューメイクスピリッツ、モルトウィスキーの熟成前の奴である。因みに非売品で、非売の理由は生産できる量が非常に少なく、スピリッツで売ってしまうと将来ウィスキーとして売れる原酒が無くなってしまうからだという。
右は以前から所謂地ウィスキーとして販売していたブレンディド・ウィスキーのSUN SHINE 40%
このSUN SHINE が発売されたのは1953年だったが、同年5月に大火災を起こし施設は全焼してしまったが、何と約半年で再建に成功。翌1954年には日本では当時珍しかったアロスパス形連続蒸留器も導入(こちらはグレインウィスキー用だったのか?)



ポットスティルは現在、スコットランドのForsyth (フォーサイス)が他を圧倒しているが、このスティルを作れる業者自体が抑々少ない。ポットスティルという物は大きな銅板を鍛造してそれを組み上げて作られる。更には蒸留時の高い圧力に耐えられるような精度と強度も要求される。
蒸留器の爆発による死亡事故も起きているのは事実で、蒸留自体がスティルに対して大変な負荷を掛ける。そこでそのストレスに耐え続けられる様に作るには鍛造に於ける高い精度と組み立ての技術が必要になる。よって、単式蒸留器の製作には、かなりの日数と手間が必要でどうしてもコストは高くなる。
加えて純銅の板を鍛造する場合、その板の厚さには限界がある。そして、蒸留を重ねて行くと銅板自体が痩せて行く事は避けられない。ある程度の年数で大きなパーツを交換するか、蒸留器自体を交換する必要が生じてしまう。
銅は蒸留液の不要不善な成分(特に硫黄化合物)と化学反応を起こし、スピリッツに入らない様にするという重要な役割を持っている。ハードリカーの蒸留器には必ずという程銅が使われるのである。


鋳造されたスティルは純銅製ではなく、銅に8%程の錫を加えた合金で出来ているという。ここで錫なんて入った蒸留器で大丈夫かと思われるであろうが、銅と錫は近似した特性があり、焼酎の蒸留器では錫のパーツが組み込まれている程である。ミニチュアみたいな試作機で検証テストを繰り返し行った所問題はなかったどころかオフフレーヴァー除去の点では期待を上回る部分もあったという。

鋳造なら鋳型があれば同じものを作れば作る程コストが下がる。鋳型を工夫すれば板金では難しいとされる様な複雑な曲面も容易に作れる。そして鍛造より金属を厚く出来るので寿命も長くなり、おそらく接合面も少なくて済むので強度もアップすると考えられる。又発注から納品までの日数も短くなるとも考えられるので、鋳造ポットスティルが軌道に乗れば世界のハードリカー界に革命を起こす存在になり得るであろう。

品質を落とさず中長期的なコストを抑える事に寄与するとなれば、既存の大手資本も注目し導入を進める可能性もある。若しそうなれば高岡銅器は世界に向けてその存在を大きくアピールし、前田利長高岡入城400年にして大覚醒を果たす事になるかも知れない。そこはまさに見ものである。

5年前は高岡というと北陸本線・城端線・氷見線・万葉線と乗り鉄撮り鉄三昧を楽しむ所だった。それも今は昔、北陸本線が 3セクローカル線になってしまいその楽しみは随分しぼんでしまった。
若鶴酒造は城端線の油田駅にほど近い場所にある。未だにキハ40系気動車の走る城端&氷見線砺波の地酒・クラフトウィスキーを絡めるという楽しみ方もあるという訳である。




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