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蒸留所に行くと、幾つかの樽の中から自分でボトルに詰められる場合がある。手詰めなので、" Hand Filled " と呼ばれ、自分だけのオリジナルボトルとも言える。
蒸留所に行く機会が無くとも、運が良ければそんなボトルをテイスティングするチャンスはある。


bowmore-hf532  aberlour-hf591

左画像は、BOWMORE
山岡秀雄氏の手詰めで、去年11月のWhisky Festival にてテイスティング出来た物

右はABERLOUR、西天満のあるバーの店主氏がネットオークションで仕入れた物らしく、今年5月のテイスティング この2本に共通するのは、シェリーカスク、しかもかなりガッツリな仕上がりw

シェリーカスクと云っても、様々である。シェリー熟成用に使われるのと同じbutt と呼ばれる500l 位の樽もあれば、250l クラスのhogshead、やや特殊だがoctave と呼ばれる50l 程度の樽等もある。入れられていたシェリーのタイプの違い(註1)、1st fill か2nd fill か、ウィスキーを入れる前段階の樽の処理の仕方…、こういったところで色々変って来るのである。


さて、先ずはBowmore の方だが…、 マホガニーに近いゴツい色合いで、そんな見た目通りに、シェリーの要素が前面に出ていた。でも、そこからこの蒸留所らしいキャラがしっかり反撃して出て来てくれたので、全然許せてしまう。ガッツリなシェリーでありながら、然程諄さも感じず、トータルパッケージはかなり良い。
Bowmore にはシェリーカスクが非常にフィットすると小生も考えているが、貴重な味覚体験が出来たと内心喜んだ訳であった。さすがは山岡氏!感謝を申し上げたい。

右画像のAberlour に話を移すと…、色はこちらもそこそこゴツイ赤茶
先ず一寸したゴム臭さ、これは程なく引っ込んだが、有難さを感じさせる所は殆ど無い。酒としては決して悪くは無い。この蒸留所からはA'BUNADH というシリーズが出ているのは有名だが、まさにその手詰め版という感じだった。この樽もA'BUNADH の原酒になる物だったのであろう。
この手詰めボトルのネットオークションでの入手価格が10000円を楽に超えたという話だが、これに対して、A'BUNADH なら8000円前後で買える、Batch 52まで出ている様であるが、Batch 20 以降は評価も安定して結構高く、人気の方もフランスを中心に結構高い様である。


要するに、これなら、A'BUNADH でも事足りる。 この蒸留所はPernod-Ricard、つまりフランスを本拠にする企業の傘下にあるので(註2)、フランスで人気が出そうな商品を特別に出したというのは穿ち過ぎだろうか?
Aberlour の場合は、シェリー樽とバーボン樽のヴァッティングでカスクストレンクスというのが欲しい所ではあるが…。 ウィスキー愛好家の中にも、シェリー樽熟成の物は苦手という御仁がおられる。
小生の様にワインを飲み慣れた人間なら、シェリーカスクは寧ろ歓迎となる可能性が高い。


シェリーカスクは今や貴重な物となっている。シェリー樽の供給がウィスキーの増産には追い付かない状態である。 スコッチというとシェリー樽というイメージをお持ちの御仁も多かろう。その始まりとしては、シェリーがスペインからイギリスまで樽で運ばれる事が多く、その空き樽の廃物利用が功を奏したという経緯があった。(註3
1970年にEC 域内での樽詰め状態での酒の輸出入が大幅に規制されて、運び用の樽が無くなったので、シェリー樽の供給が大幅に減った。

かくして、70年代以降バーボン樽の比率が一気に高まったが、その一方でシェリーの蔵に新品の樽を送ってシーズニングしてもらうという事が行われる様になった。シーズニングの際、質の劣るシェリーを何度も使いまわす所もあるらしい。更にはシェリーを煮詰めた物を代用品としてシーズニングで使い回すケースも以前はあった(90年代以降は禁止された)。
ワイン業界自体は拡大の一途を辿っていて、需要がうなぎ上りになるに従って、価格も高騰しまくりである。ただその中で、近年、シェリーの人気は伸びず、生産は落ち込んでいるらしい。これに伴い、シェリー樽の確保は非常に難しくなっているのが現状である。
シェリー樽の確保を狙った某サ〇〇リーが、シェリーのボデガ(bodegas)(註4)を買収したものの、その当ては見事に外れたらしい。



※ この記事は旧ブログからの移転記事につき、旧ブログにてアップされた時点(Jul. 2015)での事実関係に基いて書かれているので、現在の事実関係とは大きく異なる場合があっても何卒ご了承賜りたい。



註1)使用品種や熟成の仕方等々で色々なタイプに分かれる。大別すると、Fino、Manzanilla、 Amontillado、Oloroso、Palo Cortado、Cream、Pedro Ximénez といった辺り。
註2)Pernod とRicard は両社ともpastis (パスティス)という種類のリキュールの有名メーカーだったが、1975年に合併してPernod-Ricard が発足。それから40年、今やDiageo と双璧をなす酒類業界の世界的最大手のコングロマリット。
註3)シェリーを樽に入れて運ぶ際、コモンオーク材の樽が使い捨て的に使われた。昔はコモンオークが安価だったためと思われる。
註4)ワイン醸造所をスペイン語ではbodegas という




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