日本のみならず世界の彼方此方でブームになっていると思われるアイリッシュウィスキーだが、アイリッシュにはモルト、グレイン、ブレンディド、そして(シングル)ポットスティルウィスキー(以前はピュアポットウィスキーの名称)の4種がある。
ポットスティルウィスキーはアイリッシュ独特の物で、大麦麦芽と大麦(未発芽)の両方、更にはオーツ麦等(これも未発芽)を加えて、それをマッシング・ウォッシングを経てポットスティルで2回又は3回蒸留するのでモルトとグレインの中間的な作り方と言えるかも知れない。
そんなスコッチにはない特徴を持った酒もアイリッシュには存在する。

前記事で述べた様に、嘗て2ヶ所にまで減った蒸留所も34箇所まで増えたが、新しく出来た蒸留所も、スコットランド同様に資金繰りに色々な工夫を必要としているのは想像に難くない。ウィスキーと平行してその他の製品を製造販売しているケースも多い。その代表例が、ウィスキーになる前のスピリッツで、POTIN(ポーティン)と呼ばれるスピリッツも注目を浴びている。
2011年にCooley(クーリー)蒸留所がサントリー・ビーム(Suntory-Beam)に買収されると、同蒸留所からの外部への原酒供給が廃止されてしまった。原酒をここからの供給に依存していたメーカー(ブランド)はピンチに陥り、自前の蒸留所を作らざるを得ない所が出てしまった。これも蒸留所増加の大きな原因である。

teeling24y464a  teeling2001sherry58a
左右ともにTeeling のボトルから
左=Teeling Vintage Reserve 24yo 46.4%=single malt Irish whiskey
右=Teeling Irish whiskey 2001-14yo Sheery cask 58% Whisky Magazine editor's selection


The Teeling Whiskey Company(ティーリング・ウィスキー・カンパニー)というボトラーは近年、左の画像にある様な25~30年クラスの長熟シングルモルト等をリリースしている。
それが同年代のスコッチモルトより評価において上回る物も多いという事となると、アイリッシュの実力は世に知れ渡り、最近のアイリッシュ人気爆発に繋がったとも言える。

先日も某酒販店で、このTeeling vintage reserve のシリーズ(25000円前後)が並んでいる所を指して、「これ位のレベルの酒をスコッチで探したら、これより全然高くなりますよ」と言う言葉を耳にした。(4万位にはなるという事か)
今まで人気が無かった分結果的に凄い樽が上手く残ったのではないかとも思った、そして同時に清水の舞台から飛び降りたつもりで手を出してみようかと気持ちが動きかけたものの、決してワイズスペンディングにはならないと思い留まった小生だった。

Teeling の親子(John、Jack、Stephen)がアイリッシュの牽引役としての役割も担っているが、親父=Johnは1987年にCooley 蒸留所を立ち上げた人物でもある。
この一家はクーリーを売却した金でダブリン市内のビール工場を買収し蒸留所に作り変えた。これがTeeling 蒸留所であり、モルトやポットに先行する形でグレインの原酒から蒸留を開始している。この背景にはクーリーからの原酒供給の廃止決定があると思われる。
ダブリンにはこの他に計画中の蒸留所が3ヶ所ある様で、全部稼動すれば4ヶ所。嘗ての「ビッグ4」には到底及ばないが、アイリッシュ中興、ウィスキーの都ダブリン復活の大きなアイコンと成るかも知れない。
嘗ての「ビッグ4」の一角だったMarrowbone Lane(マローボウン・レイン)を作ったのが誰あろう、この親子の先祖であるWalter Teeling(ウォルター・ティーリング)だった。それから200年を経た今、その子孫達がダブリンに於けるウィスキーの伝統的スタイルを復活させると息巻いているのである。(


長い間下火になっていたアイリッシュも90年代終盤から増産に転じたものと思われるが、その頃から作りも変ってしまっているのかも知れない。となると、最近の人気に火を付けた超傑作品はこの先もう手に入らなくなる可能性が高い。
何せ、最近のウィスキーは効率よくアルコールを採り、在庫の回転も速くする事に腐心し過ぎているとしか思えない部分がある。

アイリッシュの回復に対して、ダイヴァシティ(diversity)的な部分では喜んでも良いのであろうが、その一方でこんな事が続くのだろうかと懐疑的にもなる。
最近のマーケットを見ていると、ネタを見つけてバカ騒ぎして消費し尽くしたら、ばった屋みたいに又何処かに飛び移るというのを繰り返す様な気がしてならない。


アメリカでもバーボンは戦後長い間日陰の存在だった、日本がバブルの頃バーボンが持て囃されたものだが、行き場の見付からない酒が無理矢理日本に売り付けられたという背景もあったのである。
アイリッシュはウィスキーの元祖としての底力を取り戻し、バーボンを含めたアメリカ系ウィスキーと共にスコッチにどれだけ対抗出来るかという所は小生としても見物である。

Teeling が凄いのか、はたまたアイリッシュの潜在させる力が凄いのか?その答えが判るのにはこの先数年は掛かりそうである。何せ相手は酒という本来ロングスパンな時間と忍耐を強いる代物なのであるから。


)Thomas Street、Marrowbone Lane、Bow Street、John's Lane の4蒸留所がダブリンのビッグ4と呼ばれていたが、1920年代までに前者の2箇所が消え、1970年代には後者の2つも消えている。


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